概念を妊娠して現実を変える妊活:専門医が語る子宮とのつきあい方

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 こんにちは、ザムザです。
 今回は子宮について考えてみようと思いまして、一冊の本を手に取りました。
 ライフサイエンス出版社から出ている『専門医が語る子宮とのつきあい方』です。
 わたしは子宮に関心があります。しかし、女性の具体的な身体器官であるところの子宮ではありません。

 たとえば━━

 時と場合によって、人は「想像妊娠」をします。その場合に、人はいったい何を身ごもるのでしょうか。わたしの関心はそのような「想像的に身ごもられる何か」にありました。
 わたしの関心から子宮というものを照らせば、子宮は「想像的に身ごもる器官」になります。そのような意味での子宮は、女性だけでなく男性の身体にもありえるものです。
 男女の区別を超えて〈人間〉にありえる器官としての子宮。この記事では、そのような子宮の輪郭をつかむことを目的にします。

この記事で取りあげている本

梶原健・三輪真唯子『専門医が語る子宮とのつきあい方』,ライフサイエンス出版,2019

 

この記事に書いてあること
  • 女性の身体に固有の器官である〈子宮〉は、女性の身体が子どもを産むことができるように準備をする。妊娠可能な状態へと子宮環境を整えるときに分泌される物質によって引き起こるのが「生理=月経」である。「子宮とのつきあい方」を学ぶことは女性であることの基礎教養である。
  • 人間は事物を概念によって把握し、把握した概念によって構築された現実を生きている。把握した概念が現実に宿るとき、概念が現実に妊娠している。わたしたちの生活は「概念とのつきあい方」と無関係ではない。その意味で概念を妊娠する活動(=妊活)ではない実存はありえない。
  • 人間は「概念の妊活」をしている。人間は現実的な〈子宮〉がなくとも想像的な子宮によって妊娠することができる。「子宮」もまた概念である以上、男女の性別とは関係なく、人間の現実に「子宮とのつきあい方」を実装できる。概念の妊活は誰にでも開かれている。

 

概念を妊娠して現実を変える妊活:専門医が語る子宮とのつきあい方

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「子宮とのつきあい方」の基礎知識

 ここでは『専門医が語る子宮とのつきあい方』を読みつつ、〈子宮〉〈月経〉〈妊娠〉にフォーカスを当てることにします。それらの3つのキーワードを専門医が語るところを、適宜かみ砕いた形でご紹介します。

子宮について:子どもを宿す器官

 話はもちろん、子宮、から始まります。

 子宮は、女性の身体の器官です。男性とは異なり、女性の身体が子どもを宿す機能を持っていることを表します。きわめて一般的な子宮イメージと言っていいでしょう。

 『専門医が語る子宮とのつきあい方』の「はじめに」の文章を参考にして、わたしたちが思い描いている素朴な「子宮というもの」のイメージの解像度を上げてみましょう。

 女性は、自分の身体に対して当人がどのように思おうとも、成長とともに妊娠・出産が可能な状態へと変容していきます。この変容のプロセスにおいて重要な役割を持っているのが女性ホルモン(卵胞ホルモン・黄体ホルモン)です。

 女性の身体は、その時々の年代やライフステージによって女性ホルモンの分泌量を変化させます。月経がある時期には周期的に分泌量が変わりますし、閉経をした後では大きく低下します。

 以上の子宮のイメージを踏まえ、「女性が子宮を意識させられる」きっかけとなる〈月経〉について、以下に見ていくことにします。

 

月経について:脳と卵巣は子宮内膜をおりなす

 月経とは何か。日本産科婦人科学会の定義によれば「約1カ月間の間隔で自発的に起こり、限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的な出血」です。

 子宮内膜。━━この、子宮内膜からの出血には「脳の下垂体から分泌されるホルモン」と、「卵巣から分泌されるホルモン」が関与しています。まず「下垂体ホルモン」が卵巣に向かってシグナルを送り、卵巣のなかの卵子が育っていきます。その結果、卵子の周りに水分が溜まって卵胞ができ、卵胞のなかに「卵胞ホルモン」が分泌されることになる。このホルモンが出ることで子宮内膜がじょじょに厚くなっていくのです。

 卵胞が2センチほどまでに大きくなると排卵が起こり、卵巣に黄体ができる。この黄体から「卵胞ホルモン」と「黄体ホルモン」という2種のホルモンが生成されます。子宮内膜を厚くするのが卵胞ホルモンのほうですが、反対に黄体ホルモンは厚くなった子宮内膜に待ったを掛けます。(くわえて子宮内膜から多くの分泌物が出るように指示する働きもする。)

 子宮の内膜を受精した卵子が着床しやすい、妊娠しやすい状態にするのが黄体ホルモンです。この妊娠しやすい状態を「分泌期」といいます。しかし黄体の寿命は2週間ほどしかなく、妊娠をしない場合に始まるのが月経です。子宮内膜が剥がれ、「消退出血」とも呼ばれる出血が起こります。

 妊娠をした場合、受精卵から黄体に向かって「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human Chorionic Gonadotropin:hCG)」というホルモンが分泌されます。これにより黄体ホルモンに向けて分泌活動の継続のシグナルが送られ、月経が止まります。妊娠検査で利用されるのがこのホルモンで、検査の際には尿中に「ヒト絨毛性ゴナドトロピン」成分があるかどうかによって、妊娠の可否が判断されます。

 ただし、月経は動物全般に存在するわけではありません。ヒト以外で月経があるのはアカゲザル、ニホンザル、コウモリ、トガリネズミくらいのもので、動物全体からすればごくごく一部ということになります。

 

月経が起こる理由:3つの仮説

 

 医学部において使われる説明は「古いベッド」と「新しいベッド」の喩えです。妊娠が成立しなかった場合に、子宮内膜は着床に適した新しい子宮内膜と交換するために剥離する。子宮内膜がベッドで、妊娠しなかった場合には古いものから新しいものへと交換するというイメージです。

 しかし、じつのところ、なぜ月経は起こるのかに関しては確定的な理由はありません。ここでは月経が存在する理由として挙げられる3つの仮説をご紹介します。

①衛生説
 月経が女性の膣内・子宮内の衛生状態を保つために起こるという考えかたが衛生説です。たとえば「子宮内膜症」では卵巣に古い血液がたまることで衛生上の問題が起こり、炎症や感染症が起こりやすくなります。とはいえ、月経によって膣内や子宮内がきれいになることの直接的な根拠はありません。
②効率説
 着床に備えて厚くなった(肥厚した)子宮内膜は黄体ホルモンの発するシグナルもあり、そのままの状態にしておくことはできません。しかし卵胞によって厚くなった子宮内膜を再吸収するには大きな代謝コストが掛かります。そのコストを避けるためには厚くなった子宮内膜を捨ててしまったほうが効率的なのだろう、という考えかたが「効率説」です。
 ところがこの「効率説」では、多くの動物に月経がないことを説明することができません。代謝コストを優先するための効率への配慮から月経が起こるのだとすれば、他の動物にも月経があるほうが自然なはずです。しかし実際の多くの動物には月経がない。これでは効率説の根拠は危ぶまれます。
③選別説
 もっとも有力視されているのが「選別説」です。適者生存の自然淘汰のように、着床しなかった受精卵は遺伝的に問題があったものと生命システムによって解釈され、選別の必要が生じる。この選別行動が、子宮内膜を脱落させる月経なのである、という考えかたです。
 また、受精卵には遺伝的には完全なものはないと言ってよく、この意味で、どの受精卵でさえも性質的には選別の対象となりえます。生命の目的が種の保存━━殖えること━━にあると考えれば、せっかく調達した受精卵が妊娠してくれなかった場合にはどの受精卵も不完全だと解釈され、選別してしまうことになったとしても不思議ではありません。

 以上、3つの仮説をご紹介しましたが、『専門医が語る子宮とのつきあい方』の本では「月経=ベッドをきれいにする」というイメージを持っていれば間違いないと述べられています。

 

経口避妊薬(ピル)について:脳をごまかすホルモン製剤

 経口避妊薬、いわゆる「ピル」はホルモン製剤です。その内容は人工的につくられた黄体ホルモンと卵胞ホルモンであり、摂取することで卵胞が成長するのに必要な2種のホルモンが全身にまわります。これにより脳の視床下部および下垂体へと作用し、脳は卵巣へと妊娠に関わるホルモンの分泌を抑えるシグナルを送り、その結果、排卵ないしは子宮内膜が厚くなることを防ぐのです。

 ピルには含有している2種のホルモンの量によって「低用量ピル」と「中用量ピル」の2種に分類されます。基本的に処方されるのは低用量ピルです。中用量ピルは、避妊にした場合に「緊急避妊法」として服用するので、血栓症のリスクもあり、長期間の服用はしません。とはいえ常用的なピルの服用は「子宮体がん」のリスクを低下させる効果があります。

 

生理痛=月経困難症について:女性であることの困難

 生理中、女性が苦しむことがあります。たとえ男性であろうとも、「生理痛」という言葉を聞いたことのある方もいるはずです。正式名称は「月経困難症」。(下)腹痛、腹部膨満感、吐気、頭痛、疲労感、脱力感、食欲不振、イライラ、下痢、憂鬱などの、月経の生理現象に伴って起こる諸症状のことを言います。(ただし、初経時や閉経前などに見られる排卵の伴わない月経━━「無排卵性月経」の場合には月経困難症が起こることは稀です。)

 なぜ、生理痛すなわち月経困難症が起こるのでしょうか。原因は子宮内膜から分泌される「プロスタグランジン」にあります。この物質には月経の行程を円滑にはこぶ目的があるのですが、諸々の症状を引きおこす原因にもなってしまうのです。

 月経困難症には2種類あります。「機能性月経困難症」と「器質性月経困難症」です。ふたつの月経困難症を分けるのは、「プロスタグランジン」か「婦人科系の疾患」かにあります。

 「機能性月経困難症」は子宮に関わる病気がない場合に、純粋に、「プロスタグランジン」が分泌される身体の機能によって引きおこる月経困難症のことです。初経後1〜2年で発症することが多く、およそ30歳までの女性に見られます。症状は月経の開始直前からはじまり、持続時間が短いのが特徴です。

 「器質性月経困難症」は子宮に関する病気がある場合の月経困難症です。とくに30歳以降の女性に多く見られ、月経開始数日前から症状があらわれはじめ、持続時間は長く、月経が終わったとしても痛みが続くことがあります。婦人科系の疾患によって「プロスタグランジン」の産出量が増えたり、排出すべき物質をうまく外に出せず、痛みにつながることもあるのです。

「子宮とのつきあい方」の基礎知識:まとめ

 子宮は子を宿す女性の身体に固有の器官です。子宮を持つ身体は、嫌が応にも産むことを可能にする準備をします。その過程で女性ホルモンが分泌され、「生理」と呼ばれる月経へと繋がります。
 月経は女性の身体におよそ1ヶ月の周期で訪れる子宮内膜からの出血です。子宮内膜は脳と卵巣からの分泌されるホルモンの影響を受け、妊娠可能な状態となります。妊娠の準備が整った期間に着床がなされなかった場合、出血を伴う月経が起こるのです。
 月経は決して快適なものではなく、むしろ苦痛であって、ときに女性であることを恨むほどの苦痛を伴います。そうした、いわゆる「生理痛」は、妊娠可能な状態へと子宮環境を整えるときに分泌される物質によって引き起こるのです。

 

「子宮とのつきあい方」を実装する

 ここからは、女性に特有の器官としてではなく、人間の現実に実装可能な概念(器官)としての〈子宮〉〈月経〉〈妊娠〉の検討を試みます。

 「子宮とのつきあい方」が女性ばかりではなく、人間全般に切迫して関わることなのだということを確認します。

概念について:人間の知性は事物をつかむ

 概念とはなんでしょうか。手元にある『新明解国語辞典 第三版』を開けば「『…とは何か』ということについての受取り方(を表す考え)。」と見つかります。あるいは『コンサイス20世紀思想事典』を開いてみますと、「個々の事象を概括的に把握した名辞」とあります。さらにもう一冊、「概念」」の欧米語での語源に注目している『思考の用語辞典』には次のように書かれています。

「ラテン語の「概念 concept」は「一緒につかむ concipere」という動詞から派生したことばだ。ドイツ語の「概念 Begriff」は「把握する、つかむ begreifen」という動詞から派生している。どちらにも「つかむ」がふくまれているね。人間は自然の事物を、知性で「つかむ」ことで、認識すると考えられている。」(中山元『思考の用語辞典』,p86)

 いずれの説明も、概念は人間の知性に関わるものであるということで一致を見ているのです。

 ところで「概念」を英語で表すと「conception」です。『コンパスローズ英和辞典』では「概念;認識,(あることに対する)考え,全般的理解」とありますが、別の意味として「妊娠,受胎」ともあります。このことは「子宮とのつきあい方」を検討するわたしたちにとっては無視できません。

 

妊娠について:知性は概念を妊娠する

 どうやら〈概念〉と〈妊娠〉とのあいだにはなんらかの類比的な関係があるようです。

 では妊娠とはなんなのでしょう。『新明解国語辞典 第三版』の項目を読むと、妊娠は「胎児を腹の中に持つこと。」と書いてあります。言うまでもなく、胎児は受精の結果として授かるものです。胎児は知性ではなく身体に関わります。

 逆を言えば、身体とのアナロジー(類比)から「知性が授かるもの」も見つかりそうです。先に引用した文章のなかから言葉を借りてくれば、それこそが「事物」なのです。

 (女性の)身体が胎児を妊娠するように、知性もまた妊娠する。知性が「認識する」という “つかみかた・把握の仕方” でもって事物を妊娠する。この、知性が妊娠した胎児(=事物)が〈概念〉である、そのようなかたちに類推できます。

 以上のことは以下のかたちにまとめることにします。

・身体は胎児を妊娠する
・知性は概念を妊娠する

 

現実について:概念は事物経験を可能にするためのカテゴリー

 ところで、哲学者カントは彼の認識論において、人間の経験を可能にするものとして〈概念〉があることを主張しています。人間が「直観的に把握するもの」と「概念的に把握していること」を総合すると、事物の認識すなわち経験が成立するというわけです。人間が経験、それはまた、〈現実〉とも言い換えられます。カントは概念を、「現実を理解することを可能にするためのカテゴリーである」と考えるのです。

 〈妊娠〉は身体を変容させるばかりではなく、知性にとっては「現実そのものを変容させることになりかねない出来事」となります。知性における「概念の問題」は、身体における〈妊娠〉との関係から把握することができるのです。

 現実は概念という事物経験を把握するためのカテゴリーを通して認識される。━━カント認識論が語るように人間全般の現実経験に関わってくるものだとすれば、なんらかの概念をひとつ把握することでさえ、現実を様変わりさせうるポテンシャルを有するのです。

 そういえばドゥルーズとガタリという2人の哲学者は、共同執筆した『哲学とは何か』(1991)のなかで、哲学の仕事は概念をつくることであると述べました。哲学が世界の原理(philosophy)を扱う学問である以上、人間の生きる現実を様変わりさせかねない概念の工作は哲学者の領分なのである、というわけです。

 

コンセプションについて:すべては妊活である

 人間が生きる〈現実〉が、各自が実装したカテゴリーすなわち概念の持ちかた如何によって左右されるのだとすれば、現実を「概念的」でありながら「妊娠的」でもあります。つまり「コンセプション Conception(概念・妊娠)」 。現実は「コンセプショナル(妊娠的・概念的)」なのです。

 人間はコンセプショナルな現実を生きている。━━このことは、身体でさえもコンセプショナルであるという認識をもたらします。そして身体を構成している諸々の器官でさえも。

 〈子宮〉もまたコンセプショナルな器官であり、人間のコンセプショナルな現実を構成する一個の概念です。〈子宮〉という概念を妊娠することによって認識される現実も変わってくる。そこでは、「概念という胎児を孕む器官としての子宮」と「概念を孕む器官を把握するための概念としての子宮」とがあります。

 注意しておきたいのは、どちらの〈子宮〉も妊娠可能なものとしての「コンセプショナルな女性の身体」のことではありません。そうではなく、事物の把握可能性にまつわる「コンセプショナルな人間の現実」を示唆する概念なのです。

 ですので、人間の行動や習慣、学習や練習、関係や経験などは、どれもがコンセプションの発見・形成・保存に関わることになります。聞きかじりの情報や特定の他人からの影響でさえ、「概念を妊娠する活動(=妊活)」ではない、ということはありえないのです。経験する何もかもが自分の現実にとって概念的にふるまい、妊娠的にふるまう。だからこそ、そうした影響作用の関係性から離れることに意味が出てくるのです。(情報遮断やユーザーブロックしかり、SNS断ちしかり、ひきこもりしかり)

 

「子宮・月経・妊娠」の意味を書き換える

 ここまで「子宮とのつきあい方」を検討するのに、概念としての〈子宮〉を見てきました。人間の現実が、〈子宮〉が胎児を妊娠するように、事物を概念というかたちで妊娠することで経験世界を把握している。そのように理解しようと試みてきたのです。

 ここでは女性の身体にとっての〈子宮〉〈月経〉〈妊娠〉を、人間の現実に実装可能な概念(器官)として再確認します。それにより、わたしたちの「子宮とのつきあい方」が別様なものになる可能性を提示します。

 まず、一般的な〈子宮〉〈月経〉〈妊娠〉の意味を確認して見ましょう。参照は『新明解国語辞典 第三版』です。

  • 子宮=女性の腹の中にある内臓で、胎児を宿す所。
  • 月経=生殖器の成熟した女性の子宮に定期的に起こる生理的出血。また、その血。
  • 妊娠=胎児を腹の中に持つこと。

 以上の3つの言葉を、わたしたちが確認してきた概念としての〈子宮〉から、順を逆にして言葉の手触りを書き直してみます。

  • 妊娠=概念が現実に宿ること。
  • 月経=自己意識の成立した人間の現実感覚に到来する実存的危機。また、その憂鬱。
  • 子宮=人間の現実を起動する器官で、概念を宿す所。

 
 差し当たっては上のような形で書くことができます。

 とはいえ〈月経〉が実存的危機に結びついていることにはただし書きが必要かもしれません。

 わたしは〈子宮〉を、現実を変化させる概念を妊娠する器官だと書きました。実存とは自分が実際に直面している現実感覚のことです。女性の身体にとっての月経は「妊娠できる状態になるための準備現象」なのでした。これが人間の現実だと、現実が妊娠可能な状態になるための準備現象として起こります。その場合の月経は、現実の変貌可能性が露呈することです。安定しているように見えたものが実は不安定だったことが露見する。これはひとつの危機であり、憂鬱です。

 事物を概念として把握し、その上で現実を生きる人間にとって、現実が異形のものへと変貌することはひとつの不安になりえます。女性が月経の際に自分自身の身体に強い違和感を覚えるように。コンセプショナルな現実を生きる人間は、「産む性」などと言われる女性が負う〈子宮〉の器官を、概念として実感することができます。そうすることによって、「子宮とのつきあい方」を身体の性別とは別の次元で実装することにつながるのです。

 

「子宮とのつきあい方」を実装する:まとめ

 

 概念として考えれば、〈子宮〉は女性の身体において胎児を宿す器官であることを離れて、人間が現実のあり様を宿すことになる器官であるという別様な概念のありかたが見えてきます。
 概念そのものは、人間が知性によって把握する事物のことです。概念があることによって理解や認識が可能になり、人間は現実を生きることができるようになるのです。
 逆を言えば、ある概念を把握することは、現実を変貌させることにもなります。その意味で、概念の発見や習得は妊活の一種であると言えるでしょう。
 人間の生きる現実はコンセプショナルです。現実は妊娠的であり概念的でもある。であるからこそ、「概念を妊娠する活動(=妊活)」ではない実存はありえないのです。

 以上から、〈子宮〉ならびに「子宮とのつきあい方」は、性別にかかわらず、現実世界を把握する人間に実装することができる概念なのです。

 

「子宮とのつきあい方」まとめ:わたしたちは絶えず妊活している

 いかがでしたでしょうか。『専門医が語る子宮とのつきあい方』はその名の通り〈子宮〉の専門家による〈子宮〉紹介本です。女性が「子宮とのつきあい方」を見直すだけではなく、男性にとっての女性の身体への理解を深めることのできる一冊でもあります。
 他方で、この記事では男女の性別とは関係なく、現実を生きる人間に関する器官として〈子宮〉の概念を検討しました。すると、わたしたち人間が誰でも「概念の妊活」をしていることが判明したのでした。
 「想像妊娠」というものがあります。生殖行為による精子を媒介にしての妊娠ではなく、“ 自分が妊娠した ”というイメージを介しての妊娠です。わたしたちが何らかの概念に出会うときは往々にして視聴覚的なイメージを頼ることになります。イメージによっても妊娠できる人間である以上、たとえ現実的な臓器としての〈子宮〉を持たなくとも、概念としての〈子宮〉は想像的に妊娠することができるのです。
 以上のイメージを踏まえて、ぜひ皆さんもご自分の妊活をエンジョイしてみてください!

_了

関連資料

梶原健・三輪真唯子『専門医が語る子宮とのつきあい方』,ライフサイエンス出版,2019

 

 

上野善道[ほか]編『新明解国語辞典 第七版 特装青版』,三省堂,2017

 

 

木田元[ほか]編『コンサイス20世紀思想事典』,三省堂,1989

 

中山元『思考の用語辞典―生きた哲学のために』,筑摩書房,2007

 

 

赤須薫[ほか]編『コンパスローズ英和辞典』,研究社,2018

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