文筆家の読書術|テーマ読み・暗記読み・つまみ読み:書いて稼ぐ技術

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 こんにちは、ザムザ(@dragmagic123 )です。

 通読、熟読、斜読、それに積読。──読書には幾つかの方法があります。

 読書が趣味のかたは「自分の本の読みかた」が一度ならず気になったことがあるのではないでしょうか。

 読書法に関する書籍は数多ありますが、今回取りあげる『書いて稼ぐ技術』にもまた読書法に関する記述があります。

(「読書術」だけを取りあげている本ではないのですが、本文にもある「つまみ読み」として、読書に関する箇所をピックアップしています)

 長年文筆業にたずさわっている著者・永江朗が明かす「効率的な読書法」をご紹介します。

この記事で取りあげている本

永江朗『書いて稼ぐ技術』,平凡社,2009

 

この記事に書いてあること
  • あるテーマに関する情報を集めるために読書をすることの目的は、そのテーマの本質を把握することである。そのためには同じテーマの本をたくさん読み、テーマの「最大公約数的なもの」を理解する。そうすればあるテーマに関する「本当のこと」がわかるようになる。
  • 人物名や固有名に馴染めない小説を読むためには「登場人物の一覧表」を作り、「登場人物の名前を暗記すること」が良い。そうすることによって誰に何が起きたのかをイメージしやすくなり、くり返し思いだすこともたやすくなる。結果、記憶への定着も高まる。
  • 目次や索引を使って本全体の構成を確認すれば、自分が読むべきところをピンポイントで知ることができる。読みたい箇所を「つまみ読み」できるのだ。また、著者が本文を書き終えてから書かれた前書きや後書きに目を通すことも本の要点を把握するうえで役に立つ。

 

文筆家の読書術|テーマ読み・暗記読み・つまみ読み:書いて稼ぐ技術

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フリーライター・永江朗の『書いて稼ぐ技術』

 

 はじめに、今回取りあげる『書いて稼ぐ技術』と著者である永江朗の紹介をしておきます。

 永江朗は文筆業をおこなうフリーライターです。雑誌編集・書店ルポ・インタビュアー。著書も多数あり、本を読んだことがなくとも『不良のための読書術』や『批評の事情』あたりは、ご存知な方もいるかと思います。

 『書いて稼ぐ技術』はおもに、文筆稼業25年にも及ぶ永江朗が、自身のフリーライターとしての経験から培われた知恵を披露する内容になっています。フリーライターとして生きることの過酷さを噛み締めつつ、「書いて生きる方法」を書き記した一冊です。

 肝心なことは永江朗はこの本で「趣味の話」をしているのではなく、「生活の話」をしていることです。

 

文筆家・永江朗の「読書術」

 この記事では、以下、『書いて稼ぐ技術』という本に書かれていることを「読書術」に絞って紹介していきます。

 ここで紹介する3つの読書術は、趣味ではなく仕事として読むための技術です。ですので、つねに間に追われて仕事をこなす「文筆家=読者」の姿が前提になっているのです。

本質をつかむ:球が止まって見えるようになるために

 本にはジャンルがあります。そしてまた、そのジャンルのなかでもどのようなテーマを扱っている本なのかが、本を読むうえで重要になってきます。勉強や調査のために本を読むときには、「あるテーマに関する情報を集めること」が目的になっています。もっと言えばそのテーマにの本質をつかむことが目的になっているはずです。

 あるテーマの〈本質をつかむ〉ための方法として、永江朗は「同じテーマの本をたくさん読む」ことを提案しています。似たような本も著者が違えば主張は異なり、類書の中で差別化されているものです。しかし同じテーマを扱っている以上は共通した部分があり、そのテーマの「最大公約数的なもの」が見えてくるようになる、というわけです。 

 テーマの「最大公約数的なもの」が見えてくることは〈本当のこと〉が見えてくることでもあり、同時にまた〈嘘のこと〉も見えてくるようになります。こうした「見えている状態」になる境地を、永江朗は「球が止まって見える」と呼びます。野球で打者がボールに対して余裕をもってバットの芯で捉えることのできる状態、ようするに、あるテーマの急所が手にとるようにしてわかる、ということですね。その境地に至るために、永江朗は同じテーマの本を読みまくることを推奨するのです。

(ちなみに、具体的な数字として永江が実践したところでは30冊程度、という記述があります。)

 

小説の読みかた:ストーリーや文章を記憶するために

 書評家でもある永江朗は小説を読むときに「登場人物の一覧表」をつくることがある、と書きます。方法はかんたん。小説を読んでいて新しい人物が出てくるたびに紙に名前をメモするだけ。他に地名や事件などの固有名詞などもメモするといいでしょう。これだけで何もせずに読むよりも遥かに小説の全体像をつかみやすくなるのです。

 海外の小説を読んでいると、日本の作品と比べて読みづらく感じることがあります。理由としては、固有名がカタカナ語で、そのうえ長ったらしい名前だったりすることが挙げられるでしょう。頭にスッと言葉が入ってこず、イメージが喚起されにくくなり、読んでいて眠くなったり、自分がいま何を読んでいるのかがわからなくなってしまうのですね。

 以上のような悩みに、永江朗は、哲学者の鷲田清一から次のようなコツを教わっています。ずばり海外文学を読むときのコツは、「登場人物の名前を暗記すること」である。普段から登場人物の名前を暗記しながら読んでいるという鷲田清一は、長ったらしい名前の代名詞とも言えるドストエフスキー小説の登場人物を、永江の目の前でそらんじることができたそうです。

 登場人物の名前を暗記することで「誰の身に何が起きたのか」のイメージがしやすくなる。だからこそ「物語の流れ」やそれを支える「印象的な文章」もすんなり頭に入ってくることができるのでしょう。記憶の基本は「くり返し思いだすこと」に掛かってきます。おもしろい小説を読めば物語のイメージを思い返すこともあるでしょう。思いだすイメージが鮮明であれば、それだけくり返し思いだすこともでき、記憶にも定着することになるのです

 

目次と索引の使いかた:本のつまみ読みをするために

 読むときに目次や索引が活用できるタイプの本があります。評論本や学術書などがそうです。読書は最初のページから最後のページまで一直線で、最後まで読むこともできます。しかし、必ずしもそれだけが読書の方法ではありません。そのために目次や索引が使えるのです。ここでは「とおし読み」や「じっくり読み」とも違う、「つまみ読み」をご紹介します。

 小説では物語世界にひたることが読書の醍醐味となってきますが、評論本や学術書は違います。評論本や学術書を読むときには、読者は本から著者の主張や思想を読み取ろうとするはずです。「何と書かれているのか」「何を言いたいのか」「何が語られているのか」──つまりは、〈情報〉を。読者は必要な情報を読むために、評論本や学術書を読むことになるのですね。

 ” 自分にとって必要なところ ” はどこなのか。そうした観点から評論本や学術書を読むときに、目次や索引に目を通して「本全体の構成」を確認することがつまみ食いならぬ「つまみ読み」の秘訣です。類書と比べて「何に力点が置かれているのか」を知ることで、自分の目的・関心からピンポイントで〈読みどころ〉を把握する。その読みどころを拾い読みすることが「つまみ読み」になるのです。

 また、前書きや後書きを読むことは「本全体の見取り図」として読むことができます。基本的に本の執筆においては、前書きや後書きは本を ” 書き終えたあと ” に書くことになる。言い換えれば、作家は本の内容を踏まえたうえで前書き・後書きを書いているので、読者は本全体のまとめとして前書きや後書きを読むことができるのです。

 

まとめ

『書いて稼ぐ技術』は本来、「読書術」に限った本ではありません。むしろ「仕事術」に類する本です。長年現役のフリーライターとして活躍してきた著者・永江朗の語り示すライターとしての実像と戦略。それがこの本の正体です。しかしこの記事では「読書術」としてのみ取りあげました。紹介した3つのワザはいずれも本を読むうえで実用的なテクニックです。ぜひご自身の読書生活のなかに取り入れてみてください。

_了

 

この記事で取りあげている本

永江朗『書いて稼ぐ技術』,平凡社,2009

 

永江朗『不良のための読書術』,筑摩書房,2000

 

永江朗『批評の事情』,筑摩書房,2004

 

永江朗『新・批評の事情』,筑摩書房,2010

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